いきつら

生き辛い

世の中は上手く出来ている

今まで、損をしないように損をしないように生きてきた

 

世の中は食うか食われるかで、隙を見せたらやられると思っていた。

 

どうやら違うらしい。

 

ずっと昔、耳かき屋さんで働いていた事がある。

そこは新規オープンして間も無い店で、採算が取れていないため店長が生活費のためにアルバイトをしにいく程だった。

 

店長が不在の間は私たちアルバイトが店を回すことになる。

 

ある日、待機中来たお客を同僚の女の子は「予約がいっぱいだ」と言って断った。

本当は暇だったのに。

アルバイトは時給制なので客を接客しようがしまいが収入は変わらない。

 

私は目からウロコで、その発想に感動し早速同じ手を使う事にした。

 

そこから少しの間は皆が気まぐれに客を入れたり断ったりしていたが、そのうち一部の女の子から「店長が可哀想だ」という声が聞こえだした。

 

私はその意味が本当に理解出来なかった。

 

 

店長が店を空けて無責任なアルバイトに任せているのは店長自身の責任だ(隙を見せた方が悪い)

そう思っていた。

 

今考えると、罪悪感から逃れる為に相手へ責任転嫁していたんだと分かる。

 

 

それでも当時、私はとても得をしていたと思っていた。

仕事をサボってお金を貰う。最高じゃないかと。

 

今は、目に見えない大切なものを失っていたんだと少し分かる。

 

それに名前を付けるならモラルとか、信念とかが近いと思うし、それでしっくり来る人はそう呼んでも良いけれど

私には言語化出来ない何か大切なものとしか呼べない。

 

見えている分の得だけを最大限に取ったつもりが、ちゃんとその分失くしてた。

 

世の中は上手く出来ている。